patako-no-oboegaki

日々のことを思いつくままに

晴れのち雨

「しあわせの書迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術」泡坂妻夫

少し前の朝日新聞に紹介されていて手に取った。と、一口で言っても入手するまでに一ヶ月以上を経ている。普段立ち寄る書店に置いてないのだ。かと言って、ネットで注文する気にもならない。だって何だか、楽しめるかどうか微妙な感じだったから。

朝日の書評から受けた印象は、「いわゆる亜流ミステリなんだろうなあ」。フェアとアンフェアの境界線にいるような。つまり場合によっては「なんじゃこりゃー!ダメだろ!」と本を壁に叩きつける可能性もありそう。

という訳で、この本に対する、過度な期待は避けたかった。ふっと出会って、じゃあ買いますか、という姿勢で臨みたかった。結局、滅多に行かないショッピングモール内にある書店をぶらぶらしている時に偶然見つけた。文庫コーナーの平台にあった。

で、読んでみる。ちょっと怪しげな占い師風情の主人公たちが、とある新興宗教団体の怪奇現象に興味を持つところから物語は始まる。死んだ筈の有名人が、偶然出会った人の家族が、生きた姿を目撃されているという。彼らは件の宗教団体に所属しており、調べを進めると、団体内では教祖の後継者指名が実施されようとしていた。

……うーん、新興宗教絡みのミステリってよくあるし目新しくもないなー。この主人公たちがそもそも胡散臭いから、ここになんか罠がある?てか、書かれた時代が古いから(ほぼ四半世紀前)、そこが既に違和感なんだよなあ。携帯電話のけの字も出てこないし。

と、いうのが半分くらい読んだときの感想。

ふと奥付を見てみると、わ!24版! こりゃあすごいわー、やっぱ絶対なんかあるんだこの本と思い直し、さらに読み進めてみる。

なるほど。ほうほう。トリックはそれか。そしてアノヒトが黒幕。

ふーん、確かに面白かったけど、でも、普通のミステリだったなー。うん。

うん?え?え!?

わーーーーー。すごっ。

全貌が分かった時、実際に感嘆の声を出してしまったと思う。話題になるのが納得の読後感だった。作者の「読者をあっと言わせよう」という気概がめいっぱい感じられる、素敵な一冊だった。出会えないままにならずに良かった。

 

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)